創業110年となる精養堂製菓店は1993年の一期計画(精養堂アパートメンツ)に続き、旧店舗、工場跡地に本建物が完成した。
配置計画は、精養堂アパー トメンツと平行した南北軸配置。店舗と住宅の入口を明確に分ける為に、西側境界に沿って深い奥行きのコリドーを設け、奥まったエントランスを中心とした住戸配置となる。南西側の広がった敷地部分には南面する別棟を配置し、結果として多様な住戸プランが生まれた。
建物性能はあらゆる意味において長寿命であることに取り組んだ結果、「住宅性能表示制度」耐震等級二、温熱環境等級四、その他を取得した。室内は外断熱+Low-eガラスにより高い断熱性能を有している。これにより温熱環境の快適性ばかりでなく高い省エネ性も発揮できる。また、共用部の電力消費を補う為に発電出力10.08kwの太陽光発電システムを設置している。
集合住宅の命名は初代頭首の名前にちなみ BOKKEN SEIYODO と命名され、店舗は「ぱんやのパングワン(フランス語のペンギン)」として四代目当主に引き継がれた。
BOKKEN SEIYODO & ぱんやのパングワン
店舗付集合住宅:鉄筋コンクリート造、地下1階 地上5階
建築面積:357.38平米
延床面性:1716.35平米
東京都世田谷区
意匠/構造
中庭 東側
中庭のシンボルツリーは、樹齢100年近い椎木、その他の銀杏・紅葉・杏・だいたいなどの既存樹が残されていて周辺外部空間へ潤いを与えている。
南北軸の中庭
敷地南側に残された大木の間を抜けて、北側へ至る奥深い南北軸の中庭は
光と風が戯れる。一期計画の精養堂アパートメンツに面した東面には、長
さ16メートル、高さ4メートルの緑化壁が設置され、蘇った古井戸の地
下水を植物に潅水している。
南側 全景
ぱんやのパングワン 道路側正面
オーナーの家族が運営する創業110年の製菓店は、ぱんやのパングワン(フランス語のペンギン)として生まれ変わった。
店舗内装は伝統と新しさをテーマにデザインされた。
売り場の床には燻した煉瓦を、カフェの床にはテラスに連続するウッドデッキ材を使用した。壁仕上げは外部のせっき質タイルを取り込みやわらかな左官材壁と対比させている。カフェ奥の壁には50年以上パンを入れる木箱として使用されてきた板を型枠材として使い、木箱に書かれていた精養堂の文字が絶妙に浮き上がり伝統を感じさせている。
カフェから売場側を見る
コンクリート表面に浮き上がった精養堂の文字
地下厨房
コリドー
深い奥行きのコリドー(回廊)は、都会の喧騒から静寂へと繋がる場所として機能している。
両側の壁は、杉板材型枠によるコンクリート打ち放し、もう一方の壁には400本におよぶレッドシダーのタテ桟が組み込まれている。
4ミリのアルミ板によるボールと天井は、シンプルに間接照明のふところを形作っている。
エントランスホール